コンテンツにスキップ

3.4 データ分析・Results・Discussionの生成

このページで学ぶこと

  • AIにデータを見せて適切な統計手法を提案させる方法
  • 分析コード(R・Python)の生成と検証のポイント
  • 分析結果の解釈を一次的に支援させるプロンプト
  • 効果量の解釈の書き方
  • ResultsとDiscussionの境界の判断
  • RQごとに結果を構造化する方法
  • 有意でなかった結果の報告方法
  • Limitationsの書き方
  • Conclusion / Implications の実践的な書き方

このページの位置づけ

ResultsとDiscussionの役割・ムーブパターン・定型表現については 2.1 IMRaD構成パターン2.2 コーパスを用いた定型表現の確認 で解説しています。統計報告のAPA書式や図表キャプションの書き方は 3.3 手法・実験の自然言語化 を参照してください。本ページでは、データ分析からResults・Discussionの英文を書き上げる実践的なワークフローに焦点を当てます。

分析支援における基本姿勢

データ分析のプロセスでも、AI活用の原則は論文執筆と同じです。AIが提案する手法やコード、解釈はあくまで一次的なサポートであり、最終的な判断は研究者自身が行います。

つまり、「研究者自身が手法を理解していないのであれば、そもそもAIは活用できない」ということを覚えておきましょう。

分析でのAI活用ルール

「手法の候補提示、コードの雛形生成、出力の読み方ガイドはOK。分析結果の捏造、データに基づかない解釈の生成はNG。」

統計手法の提案

研究デザインやデータの特性を記述し、AIに適切な分析手法を提案させることができます。

プロンプト例:分析手法の提案

以下の研究デザインとデータの特徴に基づいて、
適切な統計分析手法を3つまで提案してください。
各手法について、なぜこのデータに適しているか、
前提条件(正規性、等分散性など)、注意点を簡潔に説明してください。

研究デザイン:[ここに記述]
従属変数:[変数名と尺度水準]
独立変数:[変数名と水準]
サンプルサイズ:[N]
データの特徴:[分布、欠測値の有無など]

プロンプト例:手法選択の妥当性チェック

以下の研究で [分析手法名] を使用する予定です。
この手法の前提条件を列挙し、
記述したデータ特性と照らし合わせて妥当かどうか判断してください。
代替手法がある場合はそれも示してください。

[ここに研究デザインとデータの説明]

分析コードの生成と検証

AIはRやPythonの分析コードを生成する能力に優れていますが、生成されたコードには必ず検証が必要です。

コード生成のプロンプト

以下の分析をRで実行するコードを書いてください。
- データは CSV 形式で、列名は [列名を列挙]
- [具体的な分析内容]
- 結果の要約表と可視化(ggplot2)を含めてください
- コメントを日本語で付けてください

分析に必要なパッケージがあれば、冒頭でlibrary()で読み込んでください。
以下の分析をPythonで実行するコードを書いてください。
- pandas DataFrameで、列名は [列名を列挙]
- [具体的な分析内容]
- 結果の表示とmatplotlibによる可視化を含めてください
- コメントを日本語で付けてください

コード検証のポイント

AIが生成したコードは流暢に見えますが、以下の問題が起こり得ます。

  • 存在しない関数やパッケージを呼び出す(ハルシネーション)
  • 引数の指定ミス(特にパッケージのバージョン違い)
  • 前処理の省略(欠測値処理、データ型変換など)
  • 分析の前提条件チェックが不足

コードは必ず実行して確認する

AIが生成したコードをそのまま信用せず、必ず自分の環境で実行し、エラーの有無と出力の妥当性を確認してください。特に、パッケージのバージョンによって関数の仕様が変わっていることがあります。

コードのデバッグ支援

エラーが出た場合、エラーメッセージごとAIに投げるのも効果的です。

以下のRコードを実行したところ、エラーが出ました。
原因と修正方法を教えてください。

コード:
[ここにコード]

エラーメッセージ:
[ここにエラーメッセージ]

分析パイプラインの全体設計

複数の分析を行う場合、分析の全体設計をAIに整理させると、抜け漏れが減ります。

プロンプト例:分析パイプラインの設計

以下のリサーチクエスチョンに答えるための分析パイプラインを設計してください。

(1) 各RQに必要な分析手法
(2) 分析の実行順序(前提条件の確認→本分析→事後検定の流れ)
(3) 各分析に必要な前処理
(4) 報告すべき統計量のリスト

フローチャート形式で示してください。

リサーチクエスチョン:
[ここにRQ]

データの概要:
[変数名、尺度水準、サンプルサイズなど]

自由記述データのコーディング支援

質的データの分析でも、AIを一次的なコーディング支援として活用できます。

プロンプト例:コーディングの一次候補生成

以下の自由記述回答を、テーマ別にコーディングしてください。
- まずデータを通読し、主要なテーマを5つ以内で提案してください
- 各回答にテーマを割り当て、根拠となる箇所を引用してください
- 複数のテーマに該当する回答はそのすべてを示してください
- 判断に迷う回答は [要確認] とマークしてください

[ここに自由記述データ]

AIコーディングの精度や限界、二段階運用の原則については 3.3 AIを質的データ分析に用いる際の注意点 を参照してください。

分析結果の解釈支援

統計出力やグラフをAIに読み込ませ、結果の解釈に関する一次的なフィードバックを得ることができます。

プロンプト例:統計出力の解釈

以下はRで実行した [分析手法名] の出力結果です。
この結果を、応用言語学の研究者向けに解釈してください。
- 主要な統計量の意味
- 効果量の大きさの評価
- 結果から言えることと言えないこと
- 注意すべき点(サンプルサイズ、前提条件の充足など)
新しい主張は追加せず、出力から読み取れる範囲で説明してください。

[ここに統計出力を貼り付け]

プロンプト例:グラフの読み取り

添付のグラフは [分析内容の説明] の結果です。
このグラフから読み取れるパターンや傾向を、
箇条書きで3〜5点にまとめてください。
過度な解釈は避け、視覚的に確認できる範囲でお願いします。

解釈支援の活用のコツ

AIの解釈はあくまで「こう読める」という候補です。自分の研究仮説やリサーチクエスチョンに照らして、どの解釈が妥当かは研究者自身が判断してください。AIに仮説を伝えずに解釈させ、自分の解釈と比較するのも有効な方法です。

効果量の解釈の書き方

統計報告の書式(t(28) = 2.45, p = .021, d = 0.65 のような記法)については 3.3 統計報告の書式 を参照してください。ここでは、報告した効果量を文章の中でどう解釈するかに焦点を当てます。

効果量の解釈基準(目安)

指標 用途
Cohen's d 2群の平均値の差 0.2 0.5 0.8
η² (eta-squared) 分散分析の効果量 .01 .06 .14
r 相関係数 .10 .30 .50
Cohen's f 分散分析(f値) 0.10 0.25 0.40

効果量の解釈基準は目安にすぎない

Cohen (1988) の基準(小・中・大)は便宜的な目安です。自分の研究分野でどの程度の効果量が「意味がある」かは、分野の先行研究の水準と比較して判断してください。応用言語学分野では、Plonsky & Oswald (2014) が、Cohen's d の中央値が約0.7であると報告しており、Cohenの基準をそのまま適用すると過小評価になる可能性があります。

効果量を文章に組み込む例

弱い記述(数値だけ):

The effect size was d = 0.65.

強い記述(解釈を含む):

The effect size was medium (d = 0.65), indicating that the treatment group outperformed the control group by approximately two-thirds of a standard deviation. This is comparable to the effect sizes reported in similar intervention studies in L2 vocabulary research (e.g., Smith, 2021; Lee, 2022).

プロンプト例:効果量の記述文の生成

以下の統計結果を、効果量の解釈を含む英文で記述してください。
APA第7版の書式に従い、効果量の大きさの評価も一言加えてください。
先行研究との比較は含めないでください(後で自分で追加します)。

分析: [手法名]
結果: [統計量、p値、効果量]

Resultsセクションの英文生成

RQごとに結果を構造化する

Resultsセクションは、Introductionで提示したRQの順番に沿って構成するのが最も読みやすい形です。

RQが1つの場合 RQが複数の場合
記述統計→推測統計の順で記述 RQごとにサブセクション(小見出し)を設ける
自然な段落の流れで報告 各サブセクション内で記述統計→推測統計の順

プロンプト例:RQに沿ったResults構成の確認

以下のResultsセクションが、Introductionで提示した
リサーチクエスチョンの順番に沿って構成されているか確認してください。

確認項目:
(1) 各RQに対する結果が明確に区別されているか
(2) RQの順番と結果の提示順が一致しているか
(3) 各RQに対して十分な統計的証拠が示されているか
(4) RQに関係しない結果が混入していないか

リサーチクエスチョン:
[ここにRQ]

Results:
[ここにResults]

箇条書きからResultsへの変換

以下の分析結果を、英語論文のResultsセクションとして自然な英文にしてください。
- 過去形で記述
- 統計値の報告はAPA第7版の書式で(例:t(28) = 2.45, p = .021, d = 0.65)
- 数値は変更しないでください
- 解釈や考察は含めず、結果の記述に徹してください
- 図表への参照は (see Figure 1) の形式で

[ここに分析結果の箇条書き]

有意でなかった結果の報告

有意でなかった結果(non-significant results)も、研究にとって重要な情報であり、適切に報告する必要があります。

避けるべき書き方 推奨される書き方
The difference was not significant, so we will not discuss it further. No statistically significant difference was found between the two groups, t(48) = 1.23, p = .225, d = 0.18.
The results failed to show... The results did not reveal a significant effect of X on Y.
(有意でなかった結果を報告しない) 有意でない結果も統計量・効果量とともに報告する

「有意でない ≠ 効果がない」

p > .05 は「効果がない」ことを意味するのではなく、「このサンプルサイズでは効果を検出できなかった」ということです。効果量を報告することで、実質的な差の大きさを読者が判断できるようにしてください。

プロンプト例:有意でなかった結果の記述

以下の統計結果は有意ではありませんでした。
この結果を、学術英語のResultsセクションとして適切に記述してください。

条件:
- "failed to" は使わない
- 統計量・p値・効果量をすべて含める
- 結果の解釈はResultsには含めない(Discussionで扱う)
- 過去形で

結果: [統計量、p値、効果量]

ResultsとDiscussionの境界

Resultsで「結果」を報告し、Discussionで「解釈」を行うのが原則ですが、この境界は初心者にとって曖昧になりがちです。

Resultsに書くべきこと Discussionに書くべきこと
統計的な結果の客観的な報告 結果が何を意味するかの解釈
数値・統計量の提示 先行研究との比較・照合
図表への言及と簡潔なコメント 理論的・実践的含意
予期せぬ結果の報告(解釈なし) 予期せぬ結果の説明の試み

プロンプト例:Results/Discussionの境界チェック

以下のResultsセクションに、Discussionに回すべき「解釈」が
混入していないか確認してください。

判断基準:
- データから直接読み取れる事実の報告 → Results(OK)
- 「なぜそうなったか」の説明 → Discussion(Resultsからは除く)
- 先行研究との比較 → Discussion(Resultsからは除く)
- "suggest", "imply", "may be because" 等の解釈表現 → Discussion

混入している場合は、該当箇所を引用し、
Discussionでどう扱うべきかを提案してください。

[ここにResultsを貼り付ける]

Results and Discussion を統合する場合

ジャーナルによっては「Results and Discussion」として1つのセクションにまとめる場合があります。この場合でも、各結果の「報告」と「解釈」が明確に区別できるように書くのが良い実践です。結果を述べた直後に解釈を続ける形が一般的です。

Discussionセクションの英文生成

Discussionは、結果の解釈と先行研究との関連づけが求められるため、AIに丸ごと生成させるのは危険です。骨格を自分で作り、英語化を依頼する方法が安全です。

ステップ1: 日本語で骨格を作る

2.2 Discussion のムーブ で示した6つのムーブに対応させて、以下の要素を1〜2文ずつ日本語で書きます。

要素 対応するムーブ
主要な結果の要約(何がわかったか) 結果の要約
結果の解釈(なぜそうなったか) 結果の解釈
先行研究との一致・不一致 先行研究との比較
結果の理論的・実践的な含意 含意の提示
本研究の限界 限界の記述
今後の研究への示唆 今後の研究

ステップ2: AIに英語化を依頼する

以下の日本語は、英語論文のDiscussionの骨格です。
この流れを維持したまま、自然な学術英語の段落にしてください。
- 適切なヘッジ表現を含めて(suggest, may, appear toなど)
- 断定的な因果関係の主張は避けて
- 新しい主張や事実は追加しないでください
- 具体的な文献引用(著者名、年)は入れないでください

[ここに日本語の骨格]

ステップ3: 論理の飛躍をチェックさせる

以下のDiscussionを読んで、
データに基づかない過度な一般化や論理の飛躍がないか確認してください。
問題のある箇所を引用し、なぜ問題かを説明してください。
修正の方向性を1行で示してください。

[ここにDiscussion]

Discussionでの注意点

AIは「もっともらしいが根拠のない考察」を生成しがちです。特に、自分のデータが直接示していないことへの言及、先行研究との安易な結びつけ、因果関係の断定には注意してください。

Discussionの Before / After 例

Before(弱い考察):

The results showed that the experimental group scored higher. This is because the treatment was effective. Previous studies also found similar results.

問題点: 因果関係を断定している("This is because")。先行研究の引用が漠然としている。データが示すのは相関であり因果ではない可能性。

After(強い考察):

The experimental group demonstrated significantly higher scores than the control group (d = 0.65). One possible explanation for this finding is that the treatment provided additional opportunities for contextualized practice, which has been shown to facilitate vocabulary retention (Smith, 2020). This interpretation is consistent with the findings of Jones (2021), who reported a similar advantage for learners receiving meaning-focused instruction. However, it should be noted that the present study employed a quasi-experimental design, and therefore causal claims should be made with caution.

Limitationsの書き方

Discussionの末尾に書く「研究の限界(Limitations)」は、査読者が必ず注目するセクションです。限界を率直に認めつつ、研究の価値を損なわないバランスが重要です。

よくあるLimitationsのカテゴリ

カテゴリ 典型的な表現
サンプルの限界 特定の集団に限定 The sample was limited to university students, which may limit the generalizability of the findings.
データ収集の限界 自己報告データのみ The reliance on self-reported data may have introduced response bias.
研究デザインの限界 横断研究で因果推論不可 The cross-sectional design precludes causal inferences.
測定の限界 単一の指標のみ Only a single measure of X was used, which may not fully capture the construct.
外的要因 統制できなかった変数 The study did not control for the potential influence of Y.

Limitationsの書き方の原則

  1. 限界を認めた後に、その影響の度合いを述べる(限界が結果にどう影響し得るか)
  2. 限界を今後の研究への示唆につなげる(「だから次はこうすべき」)
  3. 自分の研究の価値を全否定しない"Despite these limitations, this study contributes to..."

プロンプト例:Limitationsの作成

以下の研究の概要に基づいて、Limitationsセクションの下書きを
日本語で作成してください。

以下の5つの観点で限界を検討してください:
(1) サンプルの代表性  (2) データ収集方法  (3) 研究デザイン
(4) 測定方法  (5) 統制されていない変数

各限界について:
- 限界の内容(1文)
- 結果への潜在的な影響(1文)
- 今後の研究への示唆(1文)

研究の概要:
[ここに研究デザイン・方法・結果の要約]

プロンプト例:Limitationsの英語化と表現チェック

以下のLimitationsの日本語を英語に変換してください。

条件:
- 適切なヘッジ表現を使う(may, might, could)
- 限界→影響→今後の示唆の流れを維持
- "Despite these limitations, ..." で締めくくる
- 新しい内容は追加しない

[ここにLimitationsの日本語]

Conclusion / Implications の書き方

2.1 でも述べたように、ConclusionはDiscussionの最後に含める場合と、独立したセクションとして設ける場合があります。いずれの場合も、Conclusionの役割は「だから何が言えるのか」を簡潔にまとめることです。

Conclusionに含める要素

要素 内容 注意点
主要な知見の要約 RQへの回答を1〜2文で Resultsの繰り返しではなく、意義を簡潔に述べる
理論的含意 既存の理論にどう貢献するか 過大な主張を避ける
実践的含意 教育・実務にどう役立つか 具体的な提案を含める
今後の研究の方向性 本研究を踏まえた次のステップ Limitationsと対応させる

Conclusionで新しい議論を展開しない

ConclusionはDiscussionで展開した議論の「まとめ」です。ここで初めて登場する議論や、新しい文献引用は避けてください。

プロンプト例:Conclusionの生成

以下のDiscussionの内容をもとに、Conclusionセクションを
英語で作成してください。

条件:
- 150〜250語程度
- 主要な知見の要約(1〜2文)→ 含意 → 今後の研究 の順
- Discussionで述べた内容の範囲内で(新しい議論を追加しない)
- "In conclusion," や "To summarize," で始めてもよい
- 研究のポジティブな貢献を強調する形で締めくくる

[ここにDiscussionの要約]

Discussion全体の構成チェック

Discussionの各パラグラフが適切な役割を果たしているかを確認するプロンプトです。

プロンプト例:Discussion全体の構成評価

以下のDiscussionセクションについて、パラグラフごとに
以下のどの役割を果たしているかを分類してください。

役割の選択肢:
(a) 結果の要約  (b) 結果の解釈  (c) 先行研究との比較
(d) 理論的含意  (e) 実践的含意  (f) 限界  (g) 今後の研究
(h) その他(分類できない場合は理由を記載)

そのうえで:
(1) 欠けている役割はないか
(2) 役割の順序は自然か
(3) 特定の役割に偏っていないか(例:解釈が多すぎて含意が薄い)
を評価してください。

[ここにDiscussionを貼り付ける]