1.1 生成AIの現状と可能性¶
このページで学ぶこと
- 生成AIの基本的な仕組みと現在の能力
- テキスト生成・構造化出力など、論文執筆に関連する機能
- 生成AIの得意分野と限界
- 非英語ネイティブ研究者にとってのAI活用の意義
- 研究者とAIの協働モデル
生成AIとは¶
生成AI(Generative AI)は、大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、人間が書いたような自然な文章を生成できる技術です。代表的なツールとして、OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、GoogleのGeminiなどがあります。
これらのツールは、与えられた指示(プロンプト)に基づいて文章を生成します。翻訳、要約、パラフレーズ、文法チェックなど、英語論文執筆に関連する多くのタスクを支援できます。
生成AIの内部の仕組みは細部まで理解する必要はありませんが、出力は「もっともらしい文章」を作る方向に最適化されている点は押さえておくと判断が楽になります。

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こちらのサイトでは、LLM(大規模言語モデル)がどのようにベクトル化して、意味理解しているかがわかりやすく説明されています。
Generative AI exists because of the transformer (FINANCIAL TIMES) -
以下のYouTube動画でもわかりやすく説明されています。
論文執筆に関連するAIの能力¶
テキスト生成・変換¶
生成AIが論文執筆で特に役立つ場面です。
- 日本語→英語の変換: 日本語で書いた主張を自然な学術英語に変換する
- パラフレーズ: 同じ意味を異なる表現で書き直す候補を提示する
- 文法・語法の説明: なぜその表現が不自然なのか、理由を説明させる
- 論理構造のチェック: 主張と根拠の対応関係を点検させる
構造化出力¶
生成AIは、指示に応じて特定の形式で出力を整理できます。
- 箇条書きや番号付きリストでの問題点の整理
- 表形式での比較・対照
- IMRaDの各セクションに沿った構成提案
生成AIの得意分野と限界¶
得意なこと¶
- 流暢で自然な英文の生成
- 文法的に正確な文の構築
- 複数の表現候補の提示
- 論理構造や一貫性の指摘
苦手なこと・注意が必要なこと¶
- 事実の正確性: 生成AIは「もっともらしい嘘」を自信たっぷりに生成することがある(ハルシネーション)
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数を正確に数えること: 生成AIは全体の文脈から次の単語を予測する仕組みのため、「100語でまとめて」といった指示を正確に守ることはできない
生成AIの単語のカウント方法はそもそも普通の語数カウント方法とは異なる

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最新の研究動向: 学習データの時点以降の研究は知らない
- 専門的な判断: 研究の新規性や意義の評価は人間が行う必要がある
- 文献情報の生成: 実在しない論文やDOI(digital object identifier)を作り出すことがある
重要な認識
生成AIは「優秀な言語アシスタント」であって「共同研究者」ではありません。内容の正確性、研究の意義、倫理的判断は、すべて研究者自身の責任です。
非英語ネイティブ研究者の支援¶
英語を第一言語としない研究者は、国際会議への参加や研究発表、論文執筆、改訂対応といった各段階で、追加の時間や心理的負担を抱えやすいことが報告されています(Amano et al., 2023)。一方で生成AIは、上述のように、文章の言い換え、論理の見通しの確認、文法や語法の修正案の提示、査読コメントへの返信文案の作成支援などを通して、こうした負担を「作業として分解」し、越えるべきハードルを下げやすくします。もちろん最終的な内容の正確性と判断責任は研究者側にありますが、英語処理にかかる摩擦を減らすことで、研究の中身に集中できる時間を確保しやすくなります。

Reference: Amano et al. (2023). The manifold costs of being a non-native English speaker in science. PLOS Biology, 21(7), e3002184. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3002184
研究者とAIの協働モデル¶
生成AIを論文執筆に取り入れるときは、「効率化」と「学術的誠実性」を同時に満たす設計が重要です。研究者側の専門性(独自のアイデアと批判的思考)と、AI側の強み(言語表現の改善、作業の高速化)を分担し、最後に必ず検証を入れる流れが基本です。
